唎酒師の育成スクールが選ばれるための価値を明確にする

date:2024.03.26

唎酒師の育成スクールが選ばれるための価値を明確にする

企業の声に耳を傾け、相談者に寄り添ったデザインを提案

Sake N Consulting 眞次純一さん × 大谷良輔さん (Link) 

 

デザイン経営キャンプとは、大分都市広域圏※の中小企業とクリエイターが協同で取り組む、短期集中型のワークショップです。8月から12月にかけて、企業とクリエイターがともにデザイン経営を学び、講師の指導のもとにプランを策定しました。今回は、Sake N Consulting 眞次純一さんと大谷良輔さん (Link) によるビジネスプランをその背景とともにご紹介します。

企業とクリエイターの出会い

別府市のSake N Consultingは、全国の日本酒の蔵元を対象にコンサルティング業務をおこなう企業です。和食が世界的に注目を集めるなか、インバウンド需要も見据えて海外のマーケットに向けた発信業務を支援しています。眞次さんが「デザイン経営キャンプ」に参加した大きな動機は、韓国で「唎酒師」を育成するスクールを開講するにあたり、デザイン相談をしたいということでした。

大谷良輔さんは、企業や店舗のロゴマークなどのグラフィックデザインのほか、写真撮影や冊子制作などを得意とするアートディレクターです。実はお酒が飲めないという大谷さんでしたが、日本酒文化と向き合い、知的好奇心を持ち続けてもらうための施策を提案するため、さまざまな事例をリサーチしました。

選ばれるための価値を明確にする

唎酒師とは、日本酒を美味しく飲むための知識や技術を取得するものです。その資格の取得者は日本国内のみならず、世界に4万8000人もいるそうです。なかでも今回は、日本酒ブームが起きつつある韓国でこのスクールを開講することになりました。

これまで韓国では独占的に一校だけが唎酒師を育成していました。その契約満了を機に、従来よりも短期間で安価に資格を取得できるスクールを開講し、日本酒の知識をより多くの人に広めていきたいというのが眞次さんの狙いです。

しかし、このような状況下では、眞次さん以外にも同様のビジネスに着手する人が出てこないとも限りません。そこで同じ資格が取得できるスクールが複数あったとしても、「ここで学びたい」と選ばれるための価値を明確に打ち出していく必要があると考えました。

そこで、資格を取得したら終わるのではなく、そこから始まるコミュニティの形成を価値として、講師を務める眞次さん自身の魅力や、日本酒に関心を持つ人のニーズを探りながら具体的な施策のアイデアを練っていきました。

具体的な施策の提案

大谷さんは、日本酒への知的好奇心を持ち続け、その魅力を深掘りしていくことを「日本酒”深”体験」と名付けるとともに、眞次さんのスクールで得られる大きな価値に据えました。従来のスクールでは資格を取得したら終了となるところを、知的好奇心の旺盛な方々は同じ趣味嗜好を持つ人々と、その知識や楽しみ方を共有する場を欲しているのではないかという仮定のもとに、資格を取得した人だけが参加できる勉強会や蔵元見学ツアーなど、さまざまなイベントを考案。これらを、日本酒の蔵元とのつながりも強く、韓国の食文化にも深い理解を持つ眞次さんがコーディネートすることを提案。このスクールを修了した人だけが参加できるコミュニティと、そこで得られる学びや体験は、眞次さんにしか提供できない特別な価値であり、選ばれる理由になると提案しました。

最終プレゼンテーションでのコメント (抜粋要約)

◯今後の展開について

韓国での事業プランではあるが、別府の企業として、ゆくゆくは地域に貢献したいと考えている。韓国ソウル大分便が増便され、韓国からのインバウンド客が2.6倍増となり、別府を訪れる外国人観光客の52%を占める。これを踏まえ、韓国の日本文化に対するニーズをキャッチすることは、今後、別府においてホテル・旅館や飲食店、小売店などの売上向上にも貢献できる可能性があると考えている。(眞次)

 

大谷さんは、企業の強みやバックグラウンドを聞き出し、それをこれから展開する事業にどう活かしていくかを整理してビジネスプランに落とし込んでいきました。企業の目指すものや、やりたいことにしっかりと耳を傾け、そもそも企業が持っている強みで肉付けしていく、相談者に寄り添ったデザイン提案でした。

現在、眞次さんは別府と韓国を行き来しながら、スクールの開講準備を進めています。そのスクールのロゴマークは大谷さんがデザインする予定とのこと。お二人で考えた「選ばれるスクール」の姿が、まもなく実現することを楽しみにしています。

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