「地域文化のポータルサイト」を目指して

date:2024.03.26

「地域文化のポータルサイト」を目指して

短期・中期での施策提案でミュージアムショップの成長を伴走支援

日本連合警備 株式会社 × たなかみのるさん (パラボラ舎)

 

デザイン経営キャンプとは、大分都市広域圏※の中小企業とクリエイターが協同で取り組む、短期集中型のワークショップです。8月から12月にかけて、企業とクリエイターがともにデザイン経営を学び、講師の指導のもとにプランを策定しました。

今回は、デザイン経営キャンプで審査員から最も高い評価を得たグランプリ受賞チームでもある、日本連合警備 株式会社とたなかみのるさん (パラボラ舎) によるビジネスプランをその背景とともにご紹介します。

 

企業とクリエイターの出会い

大分市で50年以上続く総合警備会社、日本連合警備 株式会社は、2023年4月より大分県立美術館 OPAM内のミュージアムショップの運営を始めました。警備に関しては老舗ですが、ショップの運営は初めてのこと。準備期間から半年が経ち、さまざまな課題に気づくとともにデザインの必要性を感じはじめ、ショップの担当者である藤澤 佳世子さんがデザイン経営キャンプに参加しました。

パラボラ舎のたなかみのるさんは、ユーザーにとって心地よく、わかりやすいデザインを心がけるグラフィックデザイナー。ロゴやパッケージから、公共施設のマニュアルまで多岐にわたります。デザイン業務から派生してイベントの企画・運営や、ECサイトの運営まで担うことも。クライアントの思いをデザインによって形にするだけでなく、ユーザーに届けるところまで徹底して伴走するクリエイターです。

たなかさんがワークショップ初日に体調不良で参加できなかったため、後日、ミュージアムショップ『PortoPorta』で初回のヒアリングをおこないました。普段からよくOPAMに足を運ぶというたなかさんでしたが、デザインで支援するという視点で改めてショップを視察。ご自身の目で見た印象と、藤澤さんが課題に感じていることをあわせて、ショップの現状を把握していきました。

POPやSNSなどタッチポイントの課題は短期間で改善

現状の取扱商品は仕入・買取がほとんどで、利益率が低いことが大きな課題でした。そこで、藤澤さんはオリジナル商品の開発を強く希望していました。また、商品の入れ替えが頻繁であるため、POPや売場のサインなどは、誰でも簡単に改変できるフォーマットを必要としていました。

経営に踏み込んだ視点でヒアリングを続けると、美術館の催しと来店者数・売上が連動していることがわかります。そこで、ショップ独自のファンを獲得し、美術館の来館者数だけに頼らない基盤を持つ必要があることが見えてきました。

たなかさんはこれらの課題の解決策について、短期的な施策と、新たな仕組やデザインを必要とする中期的な計画に分けました。

なかでも、顧客との接点に関する課題は、スタッフのスキルアップによってクリアできるものばかりでした。そこで、写真撮影やPOP・サインの制作についてレクチャーし、売場やECサイト・SNSなどが短い期間で大きく改善しました。

具体的な施策の提案

中期的な計画として、たなかさんは「通いたくなる地域文化のポータルサイトへ」というコンセプトを掲げ、複数の施策をタイムラインとあわせて提案しました。

来館者のデータを見ると、夜間開館時の来場者が決して多くないことがわかりました。PortoPortaでは大分県産の商品を数多く取り揃えていることから、たなかさんは連絡通路で連結されているホテルの宿泊客に訴求することを提案。夜間でもお土産が買えることを報せるチラシの制作に着手しました。同時に県産品のオリジナル商品の制作も進め、このチラシに掲載することで販売促進を図りました。

また、ブックマーケットやショップ独自のイベントを開催することで、企画展の来館者のみに頼らない独自の魅力発信とファンの拡大を目指すプランを提示しました。そこで新たなミュージアムショップの役割を感じさせたのは、オリジナルアイテムを作ることができるサービスの開発でした。たなかさんは、美術館の所蔵作品を商品デザインに使用する場合、製造ロットの関係でアイテム数を増やすことは難しいと指摘。そこで布製品などにプリントできるプリンターを導入し、著作者の許諾を得た作品をモチーフに、お客様が自由にグッズを制作できるサービスを提案しました。美術作品の鑑賞の思い出となるお土産を「選ぶ」楽しさを提供するショップから、「作る」楽しさも提供できる場へと進化する、新規性のある提案となりました。

最終プレゼンテーションでのコメント (抜粋要約)

◯オリジナルアイテム制作のサービスについて

美術館の所蔵品をモチーフにするだけでなく、お客さま自身の創造性をもっと活かすプログラムに発展する可能性もあるのでは。美術作品を鑑賞し、創造力が刺激されているときに、こういうサービスがあるとより良いと感じた。国内外のミュージアムショップを見てきたが、このようなサービスはまだどこにもない。この切り口には非常に大きな可能性を感じた。(審査員:山田)

たなかさんは、月毎の収支や来場者のデータから、その傾向と推移、要因を読み解き、それぞれの課題の解決・改善に必要な施策と、その実施に最適な時期を提示しました。

短期間で改善できるものと、さまざまな条件のなかでの実現可能性を探りながら慎重に準備を進める必要があるものとを分け、短期でできることに関しては早急に着手して改善させるなど、スピード感のある対応で支援しました。

中期的な取組については、現在も実現に向けて着実に協働が進んでいます。たなかさんのデザインによって、地域文化のポータルサイトへと成長していくPortoPortaに、こらからもぜひご注目ください。

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