日本酒文化を若者世代へ繋ぐための提案

date:2025.03.04

日本酒文化を若者世代へ繋ぐための提案

柔軟性のあるクリエイティブで新たな集客を提案

株式会社SEVEN HOLDINGS 小野育洋さん×大分県立芸術文化短期大学 福田晃平さん

デザイン経営キャンプとは、大分都市広域圏※の中小企業とクリエイターが協同で取り組む、短期集中型のワークショップです。9月から1月にかけて、企業とクリエイターがともにデザイン経営を学び、講師の指導のもとにプランを策定しました。今回は、株式会社SEVEN HOLDINGS 小野育洋さんと大分県立芸術文化短期大学 福田晃平さんによるビジネスプランをその背景とともにご紹介します。

執筆  アドバイザー 井上龍貴

企業とクリエイターの出会い

大分市の株式会社 SEVEN HOLDINGSは、大分市都町に位置する和食料理店「七村酒店」や大分市中心市街地で「ONO SAKETN」などの店舗を運営しています。2店舗を通じて地域の食材と日本酒を提供し、大分県の魅力を発信しています。オーナーの小野育洋氏は佐伯市出身で、沖縄での経験を経て大分に戻り、SEVEN HOLDINGSを設立。

今後の事業運営をより持続可能なものにするために、デザイン経営を導入したいというのが小野さんの参加の動機でした。

クリエイターとして協同した福田さんは、大分県立芸術文化短期大学の2年生。プロダクトデザインを専攻していますが、自身で田植えをおこなうなど食領域への関心が高く、今回はデザイン経営を学びたいとワークショップに参加。若年層の自由な発想を活かした提案を得意としています。

まずは、「七村酒店」「ONO SAKETN」の2店舗で実施されている業務内容や、小野さんが向き合っている課題について、実際の現場に足を運んで丁寧にヒアリングを実施していきました。

居酒屋を取り巻く現状を把握

福田さんがヒアリングから抽出した課題は、「若年層の酒離れ」「居酒屋の店舗数減少」の2つでした。若年層の酒離れについては、20代の1人あたりの飲酒量がここ数十年で25%減少し、飲酒する割合も半分以下になっているという統計が公開されており、その流れに追従するように居酒屋自体も減少。若年層がお酒に触れる機会がなくなるという連鎖が生まれていました。

さらに、若年層の飲酒量が減少した要因には、健康志向の高まりや価値観の多様化、さらにお酒以外の娯楽や飲料の選択肢の増加も挙げられます。

このような背景と、大分の地酒の魅力を発信したいという小野さんの想いを元に、「七村酒店」「ONO SAKETN」の2店舗で実施可能な施策案を2名でディスカッションしながら整理していきました。

そのなかで大事なポイントとなったのは「若年層へ日本酒文化をどのように訴求するか」という点でした。そこで、街なかにある「ONO SAKETN」を集客の起点にしつつ、「七村酒店」へと誘客する導線を作るためのアイデアを考えていきました。

具体的な施策の提案

これらの課題を解決するために、【次世代の「日本酒文化の窓口」をつくる】をテーマに据えてビジネスプランを提案しました。

このプランは、若年層に日本酒の魅力を広め、地域の酒文化を醸成するための多角的な取組です。まず、「ONO SAKETEN」を活用して定期的に飲み比べイベントを開催し、七村酒店の認知度を高めるとともに、店舗への送客を促進する導線を構築します。

また、SNS運営のレギュレーションを見直し、若年層に響く効果的なPRを展開し、店舗内ではポスターやMAPを活用して県産酒の魅力を視覚的に伝え、味わいだけでなく地域性を含めた深い理解を促します。

加えて、大分県立芸術文化短期大学の学生と連携し、告知物や店舗で使用するプロダクトを共同で制作することで、若年層と緩やかなコミュニケーションを図ります。

最後に、来店されるお客様と店舗が協力し、若年層限定で日本酒が1杯無料になるデポジット制度を導入し、日本酒を試すきっかけを提供することで、新しい顧客層の開拓を目指します。

最終プレゼンテーションでのコメント (抜粋要約)

◯提案に関するアドバイス

若年層の酒離れをもう少し俯瞰して分析してみると他の要因も出てくると思う。

OPA自体に店子として提案することも可能であり、たとえば日本酒マイスターなど、専門性の高いものや、地域の温泉などとの連携も考えられるとより良くなる。(審査員:吉岡)

2店舗の名称の統一まで踏み込んで提案をしても良いと思った。

若年層に対してわかりやすくデポジットのプランを考えられて良かった。(審査員:田中)

大学連携や投資を実施するプランは踏み込んでいて良い提案だった。

大学生や若年層とコミュニティを形成することで、小野さんの多忙という課題の改善に向かう可能性がある。完全学割などを実施していくことで、他店との差別化や雇用に結びついていくと思う。(審査員長:山田)

デザイン経営の第一歩となる今回のビジネスプラン策定は、SEVEN HOLDINGSと福田さんの両者にとって初めて取り組む内容でした。

実際に現場を訪れて、課題とその原因を2人で丁寧に話し合いながら、たどり着いた解決策である新たな試みは、現状を悲観するのではなく、どのようにポジティブに変換していくかというクリエイティブな発想で考えられた提案でした。

県産酒の魅力を次世代の方々と共に広め、その文化を育んでいく息の長い事業になることを心から楽しみにしています。

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