持続可能な成長のための広報戦略
date:2024.03.26
企業の目的を第一に考え、クリエイティブで下支えする
株式会社 サポートジャングルクラブ 浜川仁志さん × green circle 神鳥絵里さん・兼孝さん
デザイン経営キャンプとは、大分都市広域圏※の中小企業とクリエイターが協同で取り組む、短期集中型のワークショップです。8月から12月にかけて、企業とクリエイターがともにデザイン経営を学び、講師の指導のもとにプランを策定しました。今回は、サポートジャングルクラブ 浜川仁志さんとgreen circleによるビジネスプランをその背景とともにご紹介します。
企業とクリエイターの出会い
別府市のサポートジャングルクラブは、化粧品の製造・販売業と輸入販売業を営む企業です。創業者一家がアマゾンに居住していた際に出会った「コパイバ マリマリ」をはじめとする、有用植物を用いた自然派の化粧品等を製造・販売し、森林を伐採しない採取法とフェアトレードで、アマゾンの生活を支援しています。YouTuberとのタイアップによって「コパイバ マリマリ」の認知が拡大しており、これを持続的なものにするための次なる広報戦略を考えるため、営業部の浜川さんがデザイン経営キャンプに参加しました。
green circleは、企業・商品のブランディングから、広報物・パッケージ等のデザイン、映像制作まで手がける、PRを得意とするデザイン会社です。これまでに大分県を代表する郷土菓子や農産物のブランディングやPR、自治体の記念事業の広報物など、幅広くクリエイティブに携わっています。
いつもはプロデューサーとしてプロジェクトを統括する役割を担う神鳥絵里さんが、今回はデザイン経営を学びたいとワークショップに参加。プランの提案はクリエイティブディレクターの神鳥兼孝さんが担当しました。
まずは「コパイバ マリマリ」というめずらしい商材や、自然との共生や経済循環を強く意識したビジネスモデルが生まれた背景について、丁寧にヒアリングしていきました。また、オーガニック商材に特化した商談会へも視察に行き、顧客のニーズや市場のトレンドを探りました。
バランスを崩さない販売展開
green circleでは、クライアントから説明を受ける「オリエンテーション」を大事にしています。それを1枚のシートにまとめ、複雑に物事が絡み合うビジネスを整理して可視化することが、最初の一歩であり最も重要なプロセスになります。
今回はアマゾンに居住することになった経緯や、現地での暮らしと「コパイバ マリマリ」との出会い、そこから生まれたビジネスとその社会的意義などの相関性を俯瞰できるシートを作成し、現状を整理しました。
そこで抽出された、特徴的なキーワードは「バランスを崩さない販売展開」です。決して搾取・乱獲することなく、自然とのバランスを保ちながら、その有用植物を必要としている人に届けること。そしてその利益をアマゾンに還元すること。これがサポートジャングルクラブが大切にしている循環でした。
利益を得ることが目的ではありませんが、「必要としている人に届けること」と「アマゾンに還元すること」を達成するためには、その価値を広め、利益を得ることが必須です。いかにその均衡を取りつつビジネスを成長させるかが、大きな課題となりました。
具体的な施策の提案
サポートジャングルクラブでは、これまでBtoCの展開を中心としていましたが、神鳥さんはBtoBを主軸にするよう提案。取引先からユーザーを増やしていくことで、広報費を抑えつつ効果の拡大が見込めると指摘します。そこで、アウトドアブランドや企業文化に共感する顧客を持つWebショップへの営業を提案しました。
そこで重要なツールとなるのはWebサイトです。現在はECサイトしかないので、企業文化や商品の価値ををしっかり発信できるWebサイトを制作するよう提案します。あわせて、営業先が検討する際の資料となる、パンフレットの制作も勧めました。そして最後に、その効果を高めるためには、どのようなデザインとキャッチコピーが有用であるかを提案しました。
最終プレゼンテーションでのコメント (抜粋要約)
◯広報に関するアドバイス
UGC(ユーザージェネレーションコンテンツ)を活用し、ユーザーのリアルな感想をWebサイトなどに掲載することも視野に入れてはどうか。また、プレスリリースを強化し、積極的にメディアの取材を受けることも低コストで認知拡大につながる。(審査員:越田)
企業や商品が持つストーリーが非常にユニーク。外部の視点からどのように見えているのかを強く意識しながら、その独自性をしっかり発信していってほしい。(審査員:山田)
サポートジャングルクラブとgreen circleとの協働は、1枚のオリエンシートを丁寧に作ることから始まりました。このシートの存在が両者の認識を1つにし、その先の提案がスムーズに展開できました。
また、デザインにたどり着くことが前提ではなく、目的を達成するために、誰にどう作用するアクションが必要かを考え、その効果を最大化するためのツールをデザインや言葉で補っていくというロジックが印象的でした。企業が達成すべき目的を第一に考えながら、クリエイターとしての職能を活かして下支えするビジネスプランの提案でした。